懸命に努力するって 
                 遠野市・曹源寺副住職・菊池良行 


 先日、新聞の読者欄に「物事を一生懸命努力する人の事を、『オタク』『ネク
ラ』と呼び、軽じる風潮を増幅させるお笑いタレント」と言う投稿記事が掲載され
ました。

 確かに、最近のバラエティー番組のお笑いタレントのほとんどが、他人をあか
らさまに貶したり、欠点を笑いの”ネタ・ギャグ”と称して、品性を感じさせ無い
”お笑いもどき”がブラウン管から溢れる現実です。

 バラエティーでは、”軽薄”さが重要視されていて、「努力」「一生懸命」という
言葉は完全に「死語」扱いされています。挙句に懸命に努力する姿を”オタク”
とか”ネクラ”と称し、笑い飛ばすことが芸風であるかのように、錯覚しているタ
レントの多いことに、心を痛めているのは、投稿記事を書かれた方ばかりでは
ないと思います。

 宗祖道元禅師が多くのお弟子さんの前で話されたお説法の中に、お釈迦様
の弟子の「周利盤特」の逸話があります。
 「周利盤特」は、一つの偈文すら暗記できない人でしたが、心根がひたむき
で、努力を惜しまない人物だったので、他の修行僧の何十倍も努力を重ねるこ
とで、最終的には、一夏の修行で悟りを得ることができたと言う内容です。
 物事は、懸命に努力しようとする志が重要であるというお示しです。

 懸命に努力する姿を”オタク”・ネクラ”と茶化して品性の無い”お笑い”で、芸
能界にしがみつくタレントはフアンに飽きられ、厳しく批判を下されるでしょう。

 道元禅師は、まさしくそういう事を批判されています。努力精進は一分の怠り
もなく成すこと言って、懸命に努力する姿を評価しております。すべての人々が
正当に評価して、尊敬される社会に変えることこそが、道元禅師の教えの実
践なのです。
 さて、皆さんはどのように考えられますか?