いつでも会える

                               奥州市・江刺区・守林寺住職・松森弘隆


 建具屋さん三代目のBさんは、当時小学校一年生であったわが子を交通事故で亡くし、その後、約二十年間、毎朝休まず通学路で交通整理をしている方です。
 
 そのBさんがこのような事故が二度と起こらないようにという思いはもちろん、次のような体験もあって休まずに続けておられるのだということが最近になって知りました。

 建具師初代のBさんのおじいさんは、ずいぶん苦労もしたが、名人といわれた職人で、その作品は見事なものだったそうです。

 Bさんは父である二代目からいつも目標にするように言われたもので、Bさんも一生懸命腕を磨くべく修業していたそうですが、そういう時期に突然、わが子を交通事故で亡くし、仕事も全く手につかなくなってしまって、悲しみにうちひしがれながら、泣いていたそうです。

 そして一周忌を迎えた法要の日に、和尚さんの読経にてを合わせ祈っていると「大丈夫。大丈夫」というおじいさんの声と「お父さん、頑張って」というわが子の声が聞こえたように思ったそうです。

 しかし、翌日からもその声が心の中に響くようになり、元気が出てきて、ふっきれたように仕事に専念できるようになりました。

 そして「ここは、こうするのだよ」とおじいさんが導いてくれるのだそうです。しかも、思ったような作品がつくれるようになったそうです。

 そして亡くなったわが子も「お父さんと一緒だよ」などともいってくれるように感じられるのだそうです。それ以来、毎日、通学路の交通整理をし、墓参りも続けています。

 「亡くなっても祈れば、大切な人に、いつでも会えるんですよね」とBさんは、私に笑みをうかべ、静かに合掌しました。