「ほどほど」の効用

                               紫波町・高金寺住職・大松博典


 現代社会は国際社会だ、情報化社会だ、高齢化社会だ、などといろいろなことを言われます。加えて、この頃は経済が大変で不況だ、不況だと大人が言います。

 子ども達も大変で、テレビだ、塾だ、勉強だと忙しく過ごしています。毎日とりつかれたように忙しく動き回っています。

 さて、仏教では、人間を悩ませるものを煩悩とおさえます。たくさん煩悩がある中で、おおもとにあるものを三つの毒、三毒と言います。貧・瞋・痴がそれです。

 貧とはむさぼり、瞋とはいかり、痴とは愚痴です。一つにまとめると欲望です。この欲望には限りがありません。

 食べたい、飲みたい、眠りたいといった本能的な欲望から、お金が欲しい、名誉がほしいといった欲望まで、数え上げればきりがありません。

 この欲望をコントロールすることを仏教は説きます。睡眠欲や食欲は人間の本能として備わっているものですから、全く失くしてしまうことは不可能ですし、失くしてしまったら生命活動そのものが成り立ちません。 

 よく「煩悩をたち切る」と言いますが、もちろん、生命活動をやめてしまうことではありません。そうではなくて、コントロールすること。「ほどほど」になじむことを言うのです。

 そろそろ結論にいきましょう。人間の煩悩は、それはそれはやっかいなもので、限度がありません。それによって人は大いに苦しめられます。

 何とかする方法は、それは「ほどほど」の効用をよく心得て、「ほどほど」になじむことしかないようです。