命欠け

                            遠野市・曹源寺住職・菊池良行


 タイトルの『命欠け』とは、私たちが、普段理解している「命を懸けても構わないという『命懸け』 とは違う「自分の命が、あたかも手の平から滑り落ちていくようにして日々欠けて無くなっていくさまの『命が欠けるという意味の『命欠け』(いのちがけ)』というお話です。

 昨今、私たちの人生は男女平均で82年といわれています。その82年を日数に換算すると約30.000日になります。長いと感じる人もいれば、案外短いと感じる人もいるでしょう。

 日数の長短の感じ方にかかわらず、 ご自身の何万日かもしれない命の日数が、手の平をすべり抜け、確実に一秒一秒、、一日一日と時間の経過と共に、ひたすらに命が欠けてやがて無くなってしまう事実を、意識しながら生活している方は少ないのではないでしょうか。

 修証義第五章第三十節の中に「光陰は矢よりも速やかなり、身命は露よりももろし・・」「徒に百歳生けらんは恨むべき日月なり悲しむべき形骸なり・・・」と示されてあります。

 「時の流れは矢よりも速く過ぎ去り、人の命は草や葉に宿る露よりもはかないもの」「うかうかと、長い年月を無駄に暮らしていては、やがては恨めしい日々となり、抜け殻のようだと後悔する」という意味です。

 亡くなった俳優の石原裕次郎さんの歌のタイトルに「我が人生に悔いはなし」がありますが、私たちも命が欠けて無くなる限られた人生を、一日一日精一杯、命を懸けて生きそして生かされて、我が人生に悔いは無しと振り返ることが出来るよう、日々精進していきたいものです。