勇気ある謝罪
                    紫波町・蟠龍寺住職・中野英明


 私たちは、失敗したり、自分に都合が悪いことが起きると、つい言い訳
をしたり、他人や廻りの所為にしてしまうことが多いです。

 ある本屋さんで万引きが起こりました。万引きしたのは中学生二人の
少年で、店主に見つかり注意されました。しかし、彼らには反省の態度
が見えなかったことから、それぞれの親に電話をした。

 一人の少年の母親が慌ててやってきた。母親は「どうして万引きなん
かしたの、お小遣いはあげているでしょう!悪い友達に誘われたの?」
と、一方的に喋りまくり、店主に謝ることもなく、お金を払って出ていった

 もう一方の親はなかなかやってこなかった。店主は無責任な親に違い
ないと思った。

 だいぶ経ってから、父親がやってきた。「大変ご迷惑をおかけし済みま
せんです」父親は子供を叱ることもせず、「ご主人ちょっと奥の方へ」と
言ったので、店主はお金で解決するつもりかと思った。

 ところが店の奥に行くと、廻りに他の客がいるにも拘わらず、その場に
土下座をしたのだった。店主も廻りのお客も驚いた。店主の言葉に促さ
れ、顔を上げた父親のその顔、悲しみで歪み、涙でぐちゃぐちゃになって
いた。少年も泣いていた。

 さてこの二人の親たち、二人とも子供を愛する気持ちには変わりはな
いでしょう。しかし母親の場合は、どこか責任を他になすりつけているよ
うに思えます。

 一方父親は、万引きをする子に育ててしまった責任は全て親の自分
にあると、厳しく己を見つめています。

 相田みつをさんの言葉に「べんかいのうまい人間。あやまりっぷりの
いい人間」というのがあります。
 素直に反省する心を持ちたいものですね。