しあわせ
                    東山町・観林寺住職・高橋哲秋


 「しあわせ」についてお話を致します。
 あなたにとっての「しあわせ」とは、どんな状態でしょうか。欲しい物が
手に入った時でしょうか。好きな人と一緒にいることでしょうか。家族が
仲良くしていることでしょうか。それとも健康でいられることでしょうか。

 私たちは自分の願いや欲望が満足された時に、幸せとか幸福だとか
言います。しかし、それは自分にとってだけの幸せであり、ひょっとする
と自分の幸せの陰には、不幸になっている人がいるかもしれません。

 「しあわせ」とは「幸い」という漢字を使います。ところが、ちょっと昔ま
では「仕え合う」と書いて「仕合わせ」と読みました。お互いが相手や廻
りのために仕え合うことを「仕合わせ」と言うのです。

 自分の欲しい物を手に入れることではなく、信頼している人に喜んで
もらえることが「仕合わせ」だというのです。

 仏教に「後楽」という言葉があります。今は「東京ドーム」となっていま
すが、あの「後楽園」の後楽です。後楽とは本来、旦那様が家族などに
施しをして、家族が喜ぶ姿を見て、最高の喜びを感じることを言います。

 勿論、家族も主人を信頼し、主人に仕えることで仕合わせを感じます。
この後楽を味わうことこそ、本当の「仕合わせ」ではないでしょうか。

 自分勝手な幸福を求めるのではなく、廻りに何かをしてあげることによ
って得られる心の満足感を味わってみたいものです。