今年も「お盆」の季節がめぐってきました。仏教や禅は知らなくても
「お盆」は忘れないでしょう。その「お盆」についてお話ししましょう。

　お釈迦さんのお弟子さんの中に、目連さんという方がおりました。
ある日、目連さんは神通力という超能力を使って、亡くなったお母さ
んが、どこの世界に生まれているのか探ろうとしました。

　生前、目連さんに大変にやさしかったお母さんのことですから、目
連さんは、お母さんはきっとすばらしい世界に生まれているに違いな
いと疑いませんでした。

　ところが、あろうことかお母さんは「食べものを食べようとすると炎
を上げて燃え出してしまう」ようなとんでもない世界に生まれていま
した。

　目連さんは困ってしまいました。得意の神通力も使いましたが思
うようになりません。困りはてた目連さんは、お釈迦さんに相談しま
した。

　するとお釈迦さんは、「目連よ、七月十五日の日に大勢の僧侶に
供養しなさい。そうすれば大勢の僧侶の読経の功徳によって、母
は救われるだろう」と、アドバイスしてくれました。

　目連さんは、お釈迦さんの言うとおりを実行し、救われたお母さん
を見ることができました。

　さて、このお話、もちろん実話ではないのですが、とても大切なこ
とを教えてくれます。

　目連さんは自分の見回りにだけ気を配っていました。お釈迦さん
はそのことに気がつかれ、自分の身の回りだけではないすべての
人々に気を配るよう覚されました。

　「お盆」はご自分の「ご先祖」さんを供養することはもちろんですが
それ以外の「有無両縁三界万霊等」に供養する、自分にとって、縁
のある人、無い人、あの世の人、この世の人、これからの人、それ
らすべての人々を含んだ、生きとし生けるもろもろの命に供養する、
そういう仏事なのです。

　自分の「ご先祖様」以外にも「ご供養」するのが「お盆」であること
を、くれぐれもお忘れなく。