仲良く・楽しく・元気よく
                   田野畑村・寶福寺住職・岩見百丈


 私たちの曹洞宗では、お釈迦様の前に7人の仏様がおられたとされてお
りまして、その7人に共通する教えとして「七仏通誡の偈」というものがあり
ます。

 その内容は、悪いことはしないように、いいことは進んでするように、そし
て心を清らかに保つように、というものですがこの教えにまつわる中国の
逸話があります。

 あの有名な詩人白楽天が道林といういわゆる禅宗の和尚さんに仏教
の真髄を尋ねたとき、和尚さんが答えたのがこの「七仏通誡の偈」でした。

 そこで白楽天は、「そんなことは3歳の子供でも知っているではないか」と
言いました。すると和尚さんは「3歳の子供が知っていることでも70歳のお
じいさんにも実行するのは難しいよ」と答えたというのです。

 これと似たような話を最近聞きました。私の親しいある和尚さんが、お檀
家さんから「仏教の真髄を示すような教えを何か一言で教えて下さい」と言
われて「仲良く・楽しく・元気よく」と答えたところ、その方から「それって、小
学校1年生の教室の黒板に書いてある言葉じゃないか」と言われたという
のです。

 さあ、小学校1年生の子供にはこうしなさいと黒板に書いてある言葉を、
大人はちゃんと実行できているのでしょうか。こうお話しする私自身も、だ
いぶ耳が痛い気がいたします。

 道元禅師の教えに、どんな正しい教えでもそれを実行しなければ意味は
ないのだというものがあります。また俗にも「子は親の背中を見て育つ」と
いうことわざがありますが、このことわざの意味する「親」というのは、子供
にとっての大人すべてのことですよね。

 この頃の子供は・・・・・・と色々と批判的な言葉を耳にしますが、それって、
この頃の大人は・・・・・ということになりますね。

 「仲良く・楽しく・元気よく」いい言葉だと思いませんか。この社会、小学校
の1年生になって、まず大人の私たちが実行しませんか。