彼岸のこころ
                     一戸町・広全寺住職・佐藤一成


 またお彼岸を迎えることになりました。お彼岸の法要は、日本独自のもの
で、平安時代の初めから行われたと言われています。

 私達の人生は、さまざまな苦しみ悩みが絶えることがありません。お釈迦
さまは「人生は苦なり」と説かれています。

 その苦の原因は何でしょうか。それは自己本位な欲望、いわゆる煩悩の
しわざです。この煩悩を取り除くことが出来れば、この人生がそのまま理想
の世界となるのです。

 彼岸とは煩悩のない平安な理想の世界であって、向こう岸です。これに
対して苦しみ悩みの多い凡夫の世界が此岸であって、こちら岸です。
 
 私達の心は自分では気づかないがいつの間にか汚れ、煩悩の虜になり
がちです。時々反省し、その汚れを洗い清めることが何ん人も必要です。

 彼岸の教えは、煩悩の汚れを取り除き、迷いの此岸から理想の彼岸に
渡るための舟を示して下さっています。 

 それは六度の教えです。即ち、布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧の六
つを実践することによって、私達は理想の彼岸に到ることが出来るという
のです。

 布施は物でも心でもお慳みなく人に与え、欲の執らわれから離れること。
 持戒は人間としての生き方のきまりをよく守ること。
 忍辱は耐え忍ぶこと。
 精進は自分のやるべきことに努力すること。
 禅定は心を落ち着けること。
 智慧本来の自己に具わる正しい判断・実践を活かすこと。

 これらの実践に努力すれば、必ず彼岸の世界に到れると示されていま
す。
 秋・春二回一週間づつ、心の洗濯を忘れず実行致しましょう。