春 彼 岸 
                 紫波町・高金寺副住職・大松博典


 「春のお彼岸」についてお話しいたしましょう。「三月は別れの季節」とはよ
く言ったもので、卒業式を筆頭に、さまざまな別れがあります。

 「暑さ寒さも彼岸まで」とは皆さんに馴染みの深い言葉で、日本の季節感を
これほど見事に言いあてた慣用句もありません。厳しい冬を思えば、是非言
葉通りであってほしいものだと思ってしまいます。

 さて「お彼岸」とは「何かに別れ何かに会う、そういう一週間である」と言うこ
とが出来ましょう。

 「冬」に別れ「春」に会う。「迷い」に別れ「悟り」に会う。「こちらの岸=此岸」
に別れ「あちらの岸=彼岸」に会う。「普段の生活」に別れ「理想の生活」に会
う。「怠け者の自分」に別れ「一生懸命な自分」に会う。
そう言う「別れ」と「出会い」の風景が「お彼岸」であると言えましょう。

 では、そのためにどうすればいいのでしょう。ちょっとした工夫が必要なのは
言うまでもありません。
 
 仏典では六つの実践をすすめています。他人のために施しをする(布施)自
分の身の回りを清浄に保つ(持戒)つらいことに耐え忍ぶ(忍辱)心を落ちつけ
る(禅定)大きく深い思慮(智慧)の実践です。

 もちろん、六つ全部出来れば言うことありませんが、一つでもかまいません。
「春のお彼岸」お寺参りをしながらどれか一つでも実践してみては如何でしょ
うか。