すまいに心を
                         千厩町・大光寺住職・千葉正道


 豊かな暮らしをめざして、一生懸命働いてきたお陰で今の私達はたくさん
のモノに囲まれ、便利で快適な暮らしを手に入れることが出来ました。その
かげでは、残念ながらマイホームを持つことに熱中する余り、おじいさん、
おばあさんとの同居も少なくなり、家族のぬくもりをなくし、一家団欒の風景
もなくしてしまったということがあります。

 このように、お年寄りと一緒に暮らすことのない核家庭が増えてくれば、
当然家の造りも変わってきます。便利で機能的な住まいを、と言うことで新
しい住宅が次々と建てられて来ているのです。

 最近の住宅で失ったものの一つに、仏間や神棚があります。そこはご先
祖様や、神様に感謝する聖なる空間でした。昔の大きな家には必ず立派な
仏間があり、その奥におかれた厳かな仏壇の中には、古くからの位牌が並
べられ、ご先祖様のみたまが集まり、ご先祖様が家族をあたたかく見守っ
てくれていたのです。

 ところが、いつの間にか仏壇も消え、神棚もない住宅が増えている今日こ
のごろ、ご先祖様や、神様へのおまいりという習慣が失われてきていること
は、すまいに心のよりどころがなくなりつつあるということです。近頃騒がれ
る家庭崩壊の原因は、こうしたところにあるといわれています。

 何かにつけて機能第一主義、能率第一主義に傾きがちな今こそ、お仏壇
に先ずテストの答案や通信簿をお見せする孫がいるような家庭であればと
思います。心の豊かさとは、案外こうしたことなのかも知れません。