仏性とは
       リンゴの分け方から学ぶ

                        遠野市・曹源寺副住職・菊池良行


 小学校の算数の問題で「4個のリンゴを3人で分けると、1人はいくつに
なりますか?」という問題があります。答えは「1と3分の1」です。ところが
ある子供は「1個づつ3人で分け、残りの1個は仏壇の仏様にお供えしま
す」と答えに書いたそうです。それを担任の先生から間違いと言われ、家
に帰り母親にがっかりしながら報告したそうです。

 「仏壇にお供えする」と答えた子供は、大変心が優しい子供です。いえ
その子供だけでなく、子供はみんな優しい心の持ち主です。4個のリンゴ
を3人で分けて、一つ余れば、近所に住んでいるお年寄りに食べてもらお
うと思っている子供もいれば、体格のいい友達に2個食べろとすすめる子
供だっています。

 そういう心を仏教では「仏性」と言います。しかし現在の学校教育は、子
供達の「仏性」を失わせる方向で行われているような気がしてなりません。

 「1と3分の1」にしても正解とは言えないのです。1個のリンゴだって、
大きさや重さにバラつきがあり、決して平等になるはずがありません。「1
と3分の1」が公平・平等だと子供達に教え込んでしまう現在の学校教育
には、人の心「人間性」をないがしろにして、ご都合主義の公平・平等の
自己主張を声高に叫ぶ人間を作り出しているようで残念でなりません。

 「1個づつ3人で分け、残りの1個は仏壇の仏様にお供えします」と答え
た子供の母親は「お母さんはあなたが好きよ」と、その子供をしっかり抱き
しめてあげたそうです。

 さて皆さんはご自分のお子さんや或いはお孫さんに、どのように接して
あげますか?