相手と同じ立場に立って
                              宮古市・心公院住職・牧野榮山


 保育園の先生が、しゃがみこんで小さな子供と何かお話をしています。
お母さんが、しゃがんで両手を広げ幼いわが子を呼んでいます。大人が
目線を子供の目の高さに合わせて接しているのです。

 このような状況、考え方などを言う時、これを仏教では「同事」と教えて
います。相手と同じ立場に立つと言うことであり、他人を自分に引き当て
て考えることであります。

 今、「介護」ということが言われています。身体が不自由で気の毒だか
ら助けてあげなければならない。それでは相手を一段低いところに見て
いるようで、私は余り正しくないように思うのです。

 他人のために何かをしようとする時でも、そこには上下や優劣のような
関係があったりするのでは、この「同事」ということには当たらないので
あります。

 お釈迦様は「自分の自己を大切にする人は、同じように他人の自己を
も大切にしなければならない」と教えています。

 他人を自己に置き換えて考えてみたら、とても差別やいじめ、生命に
かかる犯罪や事件など、これほど起こることはないと思うのですが、如
何でしょうか。

 「同事」ということは、つまり何事も相手の身になって考える心遣いが
大切であり、とてもおろそかには出来ません。