お墓のリボン
                    紫波町・蟠龍寺住職・中野英明


 若葉に香る5月の夕方のことでした。境内の墓地を見回っておりました
ところ、ある家のお墓に赤いリボンと黄色いリボンが供えられておりまし
た。

 一体何のリボンだろうと近づいてみました。リボンには1等賞と3等賞と
書かれておりました。その日は近くの小学校の運動会だったのです。

 去年亡くなったおじいちゃんのお孫さんがあげたのでしょう。その子は
大好きだったおじいちゃんに自分が1等賞と3等賞をもらったということを
何とかして教えてあげたかったのですね。

 きっと、お墓に供えれば、おじいちゃんに通じると思ったのでしょう。
私はそのリボンをみて、その子の優しさに心がほのぼのとし、これがご
供養の真なんだなあと感心させられたのでした。その子の真心は亡き
おじいちゃんに必ず通じたことでありましょう。

 ご供養の大切な事は、亡き人に対して生きているときと同じようにお供
えする事であります。ですから、おいしい食べ物を頂いたときはお仏壇に
お供えし一緒に頂く。

 うれしいことがあったときは、真っ先に報告し共に喜ぶ。ときには悲し
いこともありましょう。それも、共に悲しみを分かちあいましょう。

 亡くなられた方はいつも私達を見守り、話を聞いてくれております。
いや、そればかりではありません。亡き人の方からも、私達に語りかけ
て下さっているのです。

 静かにお仏壇に手を合わせ、亡き人を心から追慕するとき、打ちなら
す鐘の音に、亡き人のなつかしいお声を聞くことが出来ましょう。

 揺れ動く蝋燭の明かりに亡き人の面影を偲ぶことが出来ましょう。
ご供養とは真心を尽くすことなのです。