無人販売所
                       金ヶ崎町・泰養寺副住職・渡辺善幸


 皆さんは野菜の無人販売所を利用したりご覧になったことがあるでしょ
う。え、ない。それなら、新聞の無人販売ならあるでしょう。

 先日、近くの野菜無人販売所にこんな張り紙がありました。「最近お金
を入れずに品物をもっていく方があります。ちゃんとお金を入れて下さい。
1円や5円玉は入れないで下さい。もし貴方が逆の立場だったらどのよう
に感じられるでしょうか?」というものでした。

 無人販売所は無言貿易、無言商売とも言われ要は人のいない売店で
あり、人の姿を見ないで取引する商売です。これは当たり前の事ですが、
信頼があって初めて成立する商売なのです。

 日本独自の商売でして、世界中に例がないそうです。ですからこの無人
販売は日本人の性格を表すよい例なのです。日本人はよく「個人ではとて
も正直だが、小集団をくんだとき不正をする」と言われます。

 人が居なくても神様仏様が見ていますよ。という日本的宗教心みたいな
ものが、私たちの行動原理の根底にあって、それが無言貿易をずっと守っ
てきたものと思われます。

 然し今日、不信の時代といわれるがごとく、日本人は宗教心を失いつつ
あるので、それと平行して無言貿易も減少し、人を騙して、金を払わなくと
も何とも思わない輩が増え、あのような張り紙になったのでしょう。

 現在、完全犯罪などとカッコつけて、捕まらなければ何をしてもよいとか、
悪いことをしても罰なんか当たらないので神仏なんて存在しない。などと
考える輩が多くなった様です。

 悪いことをして、その結果として逮捕や判決の罰が当たるのではありま
せん。
 悪いことをするその瞬間、その行いが既に罰が当たっているのですよ。