誓 願     
                        遠野市・慶雲寺住職・菊地伯也


 本日は、瑩山禅師さまについて、お話申し上げます。これよりは、瑩山さま
とお呼び致します。

 瑩山さまは、誓願に生きられた方で、鎌倉時代の末、福井県武生市で生
母が三十七歳のときの初産の子として、お生まれになりました。「将来、世
のため人のためにお後に立たせていただける子を生ませてください」との祈
りのもと、母のあつい観音信仰によって生まれた観音さまの申し子でもあり
ます。

 八歳のとき、祖母や母に手を引かれ、永平寺へ登り、第三代義介禅師の
最後のお弟子としてのご縁を結ばれました。

 祖母の明智優婆夷は、道元禅師の最初の女性のお弟子です。祖母を通じ
て道元禅師と瑩山さまは、生前から仏縁で結ばれていたと言ってもよいでし
ょう。
 
 二十五歳のとき「すべての人びとが幸せにならないかぎり、自分の幸せは
求めない、すべての人びとの幸せのためあらゆる努力を尽くしたい」と誓願
をおこしました。

 中でも、母の悲願である「女流(女人)を救う菩薩となれ」の遺言を肝に銘
じ、道元禅師の、仏法に生きることを前提とした男女平等の思想を受けつい
で尼僧も同格にあつかったという道元禅師の教えを瑩山さまが具体化した
一つの例だと言われています。

 また、瑩山さまは、お弟子や信者を愛情をもって大切に育てられた曹洞宗
育ての親でもあります。

 誓願とは、願いに向かって 命を惜しまず必ず成しとげようと努力する誓い
であります。