添える心   
                      北上市・寶積寺住職・藤村浩禅


 日本の風土は春夏秋冬と私達の感性を育みながら、四季折々の光景を楽
しましてくれます。それを楽しむ為に私達は旅を致します。
 
 皆さんは旅が好きですか、大勢でバスに乗ってワイワイ騒いで行くのも楽し
いものです。一人旅でも団体旅行でも行く先々で多くの人との出会いと感動
があり、お世話を頂きます。
 
 旅の計画は、旅行会社が段取りよく計らって頂き、、何の手添えなしに行っ
て来ることが出来るのも、目に見えない緻密な計画があっての事。
 添乗とは、外側から付き添い、お世話する為に付き添うことであり、一期一
会の修行でもあり、身も心も惜しまずに尽くす菩薩行であります。
 
 現地までの時間、ホテルの部屋割り、宴会の献立など、特に途中のバスの
乗り降り、休憩時には無事にバスに戻ってくるようにと気を遣います。大勢の
方々を楽しく、和やかに、旅行に対する希望を期待通り努め上げるには、相
手の気持ちになって行動することでありましょう。

 仏様の教えにある「自未得度先度他の心の実践」です。陰徳を積み、自分
を先とせず相手を優先させてあげる慈悲の心の表れであります。
 
 優秀な添乗員はオーケストラの指揮に似ています。演奏にあたっては、息
のあった表現の統率が必要であり、旅行グループのメンバーバイオリン・ビ
オラ・チェロ・フルート・ティンパニーなどの演奏者に例えられます。

 各演奏者が最高の音色を出していただく為に、全体としてのハーモニーの
とれた旅行を行おうと指揮してくれます。素晴らしい演奏は心が和み、よりよ
い思い出の旅となります。
 
 私にこの添乗の心を教えてくれたKさん。Kさんは、この添乗の仕事に身も
心も費やし短い生涯を閉じましたが、まさに不惜身命の教えをいつまでも大
切にし、お互いが心を添えて、自分の眼を大切にするよう、大事なものを両
手で支え持つような心で総ての生き物と接する日をおくりたいものです。