食事の心得 
                   平泉町・見性寺住職・渡辺弘文


 「いただきます」日本人ならどなたでもそう言って食
事をいただきます。
「いただきます」とは、「食事を、いただきます」という
意味もありますが、仏教では、「命を、いただきます」
という意味に捉えます。
 
 物騒だなとお思いの方もあるかと思いますが、この
『命』とは、大根、ニンジン、椎茸、肉、魚、その他、
植物も含めた多くの生き物の『命』です。

 その『命』をいただいき、自分が生かされていただ
く、感謝の気持ちからでる「いただきます」ということで
す。
 
 曹洞宗の教えの一つに『五観の心』という教えがあ
りますが、次のような内容です。

 一つ、目の前におかれたこの食事ができるまで、ど
れほどのさまざまな手数がかけられているかを思い、
その労苦にたいして感謝していただきます。まごころ
をこめて料理をしてくれた人がいます。材料を産地か
ら運んでくれた人、丹精こめて米や野菜を作ってくれ
た人、魚をとってくれた人、多くの人々のおかげ様に
よってはじめて食事をいただくことができるのです。

 二つ、自分のおこないを反省してこの食事をいただ
きます。
 
 三つ、好き嫌いせず、欲ばらず、味わっていただき
ます。
 
 四つ、健康な身体と心を保つため、良薬としていた
だきます。おいしさを追求することばかりに熱中して、
健康をそこねたのでは何にもなりません。
 
 五つ、円満な人格完成のため、合掌していただきま
す。
 欲望や空腹を満たすだけの食事では、何の意味も
ありません。多くの生き物の命、このいただいている
命を最大限に有効にいかさなければなりません。
まちがっても悪行をなすための活力としてはならない
のです。
 
 今日からは、だまって箸を取り食事を食べるのでは
なく、以上のことを考えながら、感謝の心を持って「い
ただきます」