柔軟性について
                     北上市・寶積寺住職・藤村浩禅         


人生毎日が健康で清々しくいきたいものでございます。
 三度の食事に時折でて参りますお豆腐、奈良時代中
国より伝えられた栄養豊富な健康食品であり精進料理
には欠かせない食材であります。

軟らかくて煮ても焼いても油で揚げても、又寒い時に凍
らしてもおいしく頂けます。相手の素材を一切選ばずに
湯豆腐、すき焼き、おでんなど他にも沢山ございますが、
実にだれとでも仲よく対応し、無我の境地で生きていま
す。

お豆腐にはなぜこのような魅力があるのでしょうか。
お豆腐になる豆は最初に冷たい水に漬けられ、その上
で熱湯の中を潜り抜け、石臼で自分の形を無くし、ニガ
リによって程よい堅さになり、重い石に耐え細かい布の
目をとおり形が整えられるまでには大変な道のりを歩ま
なければなりません。

相手の思いのままにされても、その中には自分と言う
持ち味をもしっかり持ち続けております。
 「水は方円の器に従う」と申し、どのような形のものに
でもスッポリと納まると言うことです。

お豆腐以上に自分を変える液体であり冷やされれば石
と同じ堅さになり、それに温度を加えると気体となり蒸
気を発して大きなエネルギーを作ります。

沼や池に石を投げますと一瞬水は反応いたしますが、
暫くすると何ごともなかったかのように元の静けさに戻
ります。お豆腐や水はいつでも何の飾りも付けず、裸
のままで本物の姿を現し、現代に流されない味わいを
持っています。

 気忙しい現代を生きていくためにも水の働き、豆腐の行き方に学び深く味わいたいものであります。

目まぐるしく移り行く今を生き抜く為には常に相手との調和を保ち、ゆづりあい、共生の心をおこし、自分と言うものを見失う事のない日送りをしたいものでございます。