人の心の目で   
                      北上市・寶積寺住職・藤村浩禅


如何お過ごしですか。
最近は新聞でもテレビでも暗いニュースが多いです
ね。戦後、物が裕福になり、世のなか便利になり過ぎ
ている割合いには、人と人の付き合いがギクシャクし
ているように思いますが如何ですか。

子供の時より何でもかんでも物事を分析し、割り切っ
た考えを持つようになって、その本質を掴めないまま
に物事を実体として掴む傾向が多いように思います。

イギリスのファラデーの法則を発見した人が、講義中
に学生に向かってある質問をしました。ここに一本の
試験管がある。この中の液体は何であると思う。君達
の専門分野だから分析して化合物を分解してその成
分を検出、物事を各要素に分けると、すぐ分かると思
うが、実はこれは、ある学生の母親の涙です。

昨日、息子のことで苦悩を打ち明けて流した涙です。
この試験管の液体は水分とわずかな塩分と、カルシ
ュウム、目の涙腺から出る液体です。

涙というものは、人間らしい思いやりの現象であり、
お母さんの涙の中に深い悲しみと、慮るこころと、限り
ない愛情がこもっています。その苦しみや愛情を一体
どうやって分析できるのでしょうか。いかなる科学の力
でも絶対出来ません。

水と塩と何々という受け方しか出来ない人は、人間の
持つ愛情も苦しみも理解出来ない人です「肝心な愛を
受け止める。それは君達の宗教心である。ここがもっ
とも大事な所なんだ」と、教えております。

科学的、合理的に割り切るだけが真実ではありませ
ん。より大切なのは、人間の心の目で深く受け止める
こと。澄み切った温かい思いやりの心。そうした心で正
しく見ることを忘れないようにしたいものです。

ではまた、ごきげんよう。