ゆずりあう心 
            二戸市・龍岩寺副住職・岩館尚文



  イソップ物語に「谷川にかけた丸木橋の中央で、反対方向
から来る二匹の獣がばったりと出あう。両方とも相手に後もど
りを命じるが、双方とも応じない。

 ついに実力闘争に移ったため、二匹の獣は谷底へ落ちて死
んだ」というお話しがあります。

  人間はそのような愚かな行動はしません。狭い山道でも、ど
こかに必ず道幅の広い所があるはずだと、根気よく交換のでき
る地点を捜します。
 
  私たちの住む社会も同じです。狭い家庭や限られた職場で、
いろいろの性格や経歴の持ち主たちが共同生活をするのです。

  意見や感情の衝突は当然です。だからといってすぐに直接行
動に訴えたら、イソップ物語の示すように双方とも自滅するほか
ありません。
 
 人生を楽しくドライブするのには、やはり相手のために「バックす
る思いやり」が必要でしょう。それは、他人のためだけではなく、自
分の幸にも通じるのです。

 どのような狭い路でも必ず自分の通る道はあるのです。自分が
通れたら相手も通れるようにちょっと傍らにどいてあげましょう。

 その方が結果的にも早く目的地へ行きつけるのです。昔の人は
「争えばいよいよ狭く、譲ればいよいよ広し」と教えているのです。
 
 私たちは「イソップ物語」に学んで他人に出来るだけ短気を慎み、
気ながに辛抱して、認めあえる人生街道を建設しましょう。

 又、発見する努力といたわりの心を養おうではありませんか。