比べないこと
                 江刺市・守林寺住職・松森弘隆


 私たちは、どれが得か、どれが楽か、どうすれば気
に入られるかどうすれば儲かるかなどと考え、自分に
プラスになるほうばかりを選んで行動したがるもので
すが、実は、このことに苦しみの本があるように思い
ます。

 というのも、例えば、一生懸命やっているのに誰も
認めてくれないとか、自分のしたい仕事をくれない、あ
の人は私を邪魔にする、だまされて損をしたなどと、

 他人のせいにして、人を恨んだり、怒ったり、イライ
ラしたり、くよくよしたりしている人によく会いますが、

 その不満の多くは、他人と自分とを比べてばかりい
るからであるように思われるからです。

 そのような人には私は迷わず坐禅をお勧めしてお
ります。
 
 足を組み、背筋を真直ぐに伸ばしてゆっくりと息をす
る。 下腹に力を入れて、頭も手足も動かさず、自分
勝手なことを一切やめる。

 これが「比べることをやめる」ことになるからです。
 「心は肚に有り。」と言われますが、不満や悩みをは
ね返す「強い心」をつくるということは、この「比べない
肚」をつくることだといえましょう。

 「比べない肚」を持てば、肚が坐り悩みや不満、イラ
イラなどは、実は、自分の頭の中でつくり上げたつま
らないことなのだと気づくでしょう。

 「比べない」とは、「肚をつくる」ことであり、坐禅をす
ることです。それが、生きる慶びや安心を得る道であ
ると思います。