供 養 の 形 
               種市町・東長寺住職・東井千明


 霊前と香華を先師(ほとけ)に備え終えひとり読経す祥月の朝 
 
 これは、ある若いお坊さんが、ご自分のお師匠さまがお亡くな
りになり、祥月命日の朝にお詠みした短歌でございます。
 
 霊前とは、お亡くなりになりましたお師匠さまのために、心を込
めてお作りした精進料理のお膳でしょう。

 そして、お線香やお花お灯明をきれいに飾り、お一人で心静
かに祥月命日の朝、ご供養のお経をお唱え申し上げたという短
歌で、その真心のこもったご供養の様子が目に浮かびますね。

 お線香を中心に、仏様にむかって右にロウソク、左にお花、
これを三具足といいます。または、お線香を中心に、内側にロ
ウソク一対、その外側にお花一対、これを五具足と言いまして、
お飾りいたしますときの基本であります。
 
 「具足」とは、全てそろいましたという意味です。線香・ロウソ
ク・お花をきれいにお飾りする供養の形です。
 
 皆様は、仏様を供養すると言いますと何か大げさな特別な事
をお考えではありませんか。
 
 例えば、大勢の方々に御案内し、立派なお膳を用意し、盛大
に御法事をすることなど。ところが、お家の人は、お客様のお
世話にてんてこ舞いし 、故人を偲ぶ余裕などございません。

 「盛大なご法事」も努めなければならない時もございましょう。
 しかし、仏様にとりましては、毎日、私達が、生活の中で心を
込めて仏様を思うこと。

 御仏壇をきれいに整え、心静かに手を合わせることがうれし
いことなのです。
 
 私達が、一日一日を精一杯に大切に生きることが、一番の
供養になるということを忘れてはいませんか。