いじめられたら笑え 
                   野田村・寶福寺・住職・岩見百丈


 最近テレビなどで報道される青少年非行のニュースには、
実に耳を疑いたくなるものがありますが、これからお話しす
るのは、私の知り合いの方の娘さんが、その身に実際に
ふりかかったいじめを笑って解決したという話です。
 
 その娘さんは現在はもう高校も卒業していますが、中学生
の時同級生の女の子達のいじめにあっていました。どういう
いじめかというと、いわゆる「しかと」つまり仲間外れです。

 特に乱暴されるといったものではないのですが、例えば廊
下ですれ違うだけで「汚い」と言って唾を「ペッ」と吐きかけら
れるなど、かなりたちの悪いものでした。

 当然の如く、その娘さんはへ行くのをいやがるようになりま
した。お母さんは、学校へ行きたくないという吾が子にその
理由を聞いて愕然としました。
 
 早速翌日学校へ行って、校長先生にそんなことがなくなる
ように生徒を指導してくださいと頼みました。もちろん、校長
先生だけでなく、学校ではどの先生もきちんと生徒達に言い
聞かせてくれました。

 ところが、それでも「汚い ペッ」はなくならなかったそうです。
それから約一週間ほど、母子は途方に暮れてすごしました。

 どう考えてもいじめに会わなければならない理由は思い当
たりません。抱き合って泣いた夜もありました。

 口では「我慢していればその内いじめられなくなるだろう」と
いってやっても、それが慰めに過ぎないことは、お母さん自身
痛いほどよくわかっていました。
 
 そしてある晩のこと、泣いている娘の前で、ふっと、お母さん
の口からこんな言葉が漏れたのです。
 
 「お前、いじめられたら、泣くだろう。泣くからまたいじめられ
るんだ。いじめられたら笑ってみろ」
 
 何と、その娘さん、その言葉「いじめられたら笑え」を、早速
翌日から実行したのです。
 
 そして、それから数日の内に、いじめに会うことは全くなくな
ったというのです。
 
 この話に、私は何も解説めいたことは申しません。
お聞き下さったあなたご自身に、感じ取った何かを大切にし
ていただきたいと思います。