自己を捨てる 
             江刺市・菅生院副住職・伊藤正依


  日頃、人に何かを相談事をされた時などに「自分を捨て
なさい」という言葉が使われます。これは簡単なようで、実は
とても難しいとされています。
 
 実際にどういう状態が、自分を捨て切れた状態なのか、こ
れはなかなか口で説明することは出来ませんし、ましてや、
人に対して指導できるものでもありません。
 
 なぜなら、それは「自分自身」の事だからです。捨てるとい
う何か悪いイメージがありますが、決してそうではなく、自分
のおかれた状況に対して、我欲を持たずにただ身を任せる
ということが、いわゆる「自分を捨てる」「自己を捨てる」と言
うことではないかと思います。
 
 この「自己を捨てる」「自分を捨てる」という言葉は、二年
前に大本山総持寺をご退任された、梅田信隆禅師様がよ
くおっしゃっていた言葉です。 

 私達が坐禅をする時のお話の時も、全国の檀信徒の方
々へのお話の時も良くこの言葉を使われていました。言葉
を聞いていただけでは、少し難しい言葉のような印象を受
けますが、よくお話を聞いてみると、決して難しいことでは
ないというと言うことを、梅田禅師様に教えてて戴きました。

 自己を捨て、我欲を捨ててその置かれた状況に自分自
信を任せてみれば、自ずとその解決の糸口が見えてくるも
のですし、新しい発見や今まで気づかなかったことに気が
ついたりするものです。