無常のこころ 
            千厩町・大光寺副住職・千葉正道


 

お釈迦様は、その80年にわたる生涯の中で、多くの
教えを説かれました。その中に「諸行無常」の教えが
あります。「諸行無常」とは、「常なるものは無い」と書
いて、すべての物事は、常に変化して、とどまることが
ないという教えです。
 
私達は「無常」という言葉を聞くと、どんなことを思い浮
かべるでしょうか。「無常」というと、何となく寂しさとか、
もの悲さを感じてしまうのではないでしょうか。それは、
自分の身近な人や、親しかった人との永遠の別れの時
に一層強く感じられてしまいます。

あらゆる生き物は、生まれ、成長し、そしておいて、亡
くなっていきます。どんなに美しい人であっても、やがて
は年老いてしまうのです。この世に永遠に存在し続ける
というものはないのです。

いのちあるものは必ずほろびる、形あるものは必ずこ
われる、というのが「無常」であり、世のならいと思われ
ています。しかし、お釈迦様は、ただ悲しんだり、惜しん
だりするためだけに「無常」の教えを説いたのではあり
ません。
 
「無常」という事実は、決して自分の外にあるのではな
く、私達は「無常」の真っ只に生きているのです。時は
一瞬たりとも待ってくれません。今というこの時間、今
日というこの日は二度とやってきません。

二度とない人生、限りある人生の中で今をどう生きる
のか、今日をどう生きていくのかが私達にとって、とて
も大切になってくるのです。

お釈迦様は「無常」という教えによって、私達に命の
尊さを教えて下さったのです。お互いに、二度と無い人
生、かけがえのない命を大切にしたいものです。