仏さまはどこにいる

            二戸市・長寿寺副住職・平栗寿隆


 仏様は、どこにいるのでしょうか。
あの世でしょうか、お墓の中ですか、観光地のお寺の中
でしょうか。

 
 青い鳥と同じです、私達の回りに、自分のそばに、自
分の中にあるのです。

 
 私が、永平寺で合宿しながら参拝をする方々のお世話
をしていた時、たった一人で宿泊している老夫人があり
ました。

 
 私は、そのご婦人が、身よりの無い方だと聞いていまし
た。
お部屋の、お湯を交換にいった時です。 私は、その
ご婦人に、「お一人でさびしくはないですか」と尋ねました。


 すると、そのご婦人は、合掌し、ニッコリして「いいえ、
さびしくなんかありません。私はいつも仏様と一緒ですか
ら。」と静かに答えました。

 同情の気持から声をかけた私は、少し恥ずかしい気
持でその部屋を後にしました。

 
 このご婦人の言った仏様とは、どんな仏様でしょう。い
わゆる亡くなった人や、お釈迦さま、観音様というような
特定の仏様を指すのではありませんでした。

 自分の回りにあるすべてのものに対する感謝の心を
こめた仏様という言葉でした。

 
 この世には、永遠に独立し存在するものは一つもあ
りません。すべての物、現象はつながりをもって成り立
っているのです。

 
 心の眼を開いて自分の回りを見つめてみましょう。

 
 あたたかい日差しと、恵みの雨を降らせてくれる空
の仏様、きれいな空気を与えてくれる森の仏様自分の
命を与えてくれる食物の仏様、病人の看護をしてくれ
る仏様、炎天下工事現場で働く仏様、いつも自分を
心配してくれる両親、友達の仏様。

 
 私達も自分の回りの仏様にそっと手を合わせましょう。