みーんな満点 
          
陸前高田市・光照寺・高沢公省


 当山の本堂の上がり口、そこを「向拝」ごはいとか・こ
うはいとか呼びます。その向拝の格天井の板に、子供
さん達に絵を描いてもらいました。

 テーマは「仏さまの顔」でありました。今までも天井画
はあったのですが、色落ちが目立つようになり、開山5
50年を迎えるのを機会に、屋内で保存しようということ
になり、天井板や竿縁も新しくすることになったのです。

 市内全域に新聞折り込みのチラシを入れたり、また
学童クラブや地区子供会に直接呼びかけをしたりして、
参加者を募りました。

 板の数は80枚。二日間に分けて制作することにして、
その制作指導を愛媛県出身で、当市内在住の画家、
加地保夫先生にお願いしました。大工工事関係は、地
元の宮大工熊谷五郎棟梁が奉仕で引き受けて下さい
ました。

 盆参りでごったがえす人混みの中で、参加者の家族
の人達が、天井を見上げて指差したり、それぞれの顔
に満面の笑みを浮かべている光景に、私も思わず嬉し
くなってしまいました。

 絵の指導していただいた加地先生が仰るには「お母
さん方がどうもねェー。子供達は絵を描いているその
課程が楽しいし、それが分かってくるからまた描こうと
するのに、できあがった絵だけを見て、そこは違うとか
ここはこうでしょうとか言うんですよ。だったら自分で
描きゃあいいじねえかと思ったりもして」

 アッという間に過ぎ去ってしまう時の中で、今懸命に
一枚の絵と向き合っている子供さんがそこにいる。得
難い命を、今燃やしている子供さんがいる。

 私は天井板の一枚に「あなたはあなた。私は私。
みーんな違うから、みーんな満点でアリマス」と、観音
様の顔と一緒に描き添えました。