脚下照顧    
               江刺市・広徳寺住職・鈴木道隆      


 今日は脚下照顧」についてお話を致します。
そのまま解釈すれば『足下を照らし、己のここ
ろを顧みる』ということです。
 お寺さんの玄関・廊下・お便所の入り口など
によくこの「脚下照顧」の文字が目に入ります
が、私達僧侶は、この言葉を大事にしているか
らです。
 『和尚さん、家の孫娘には一本取られんし
たよ』『おやおや、それはまたどうして』で始
まった会話の中身は、健太さんが急用で出
かけましたが、忘れ物に気づき、急いで家に
引き返しました。
 玄関で履き物を脱ぎ捨て、部屋へ入り忘
れ物を手にして、いざ玄関に戻ってみると、
脱いだはずの履き物がないのです。
  『おれの履き物、どこ゛さやった!!』目をま
ん丸にして大声を出すと『じっちゃん。靴ブンな
げでだめだっちゃ。約束破ったがら隠したぞ』
健太じいさんは、言葉にグッと詰まりました。
  一呼吸して『ごめんごめん、これがら気つけ
っから堪忍してや。靴返してけれ』孫の明美ち
ゃんはニコニコしながら靴を持ってきておじい
ちゃんの前に『ハイ』と言ってそろえて置いてく
れました。 
  玄関の履き物が揃っていると、家の人も気持ち
がいいし、訪ねてきた人も気持ちがよいので、家
中みんなで履き物を揃えることにしようと約束して
いたのでした。
 脱いだ自分の履き物を見直す「心のゆとり」こそ
「脚下照顧なのです」
  お家の玄関は、家を代表する顔のようなもので
す。みんなで履き物を揃えることが出来ると言うこ
とは、家族みんなの心を揃えることが出来ると言う
ことです。

心がバラバラでは「家族」とは言えないと思います。
履き物を揃えることから「家族の和」がスタートする
と言っても過言ではありません。 
 
 皆様、今日からすぐ実行してみて下さい。


  最後に藤本幸邦老師の「はきものを揃える」という詩を
お届けします。

 
はきものをそろえると 心も揃う
     心が揃うと はきものも揃う


 ぬぐ時に揃えておくと
     はく時に 心が乱れない


 だれかが乱しておいたら
     だまってそろえておいてあげよう
 

 そうすればきっと 世界中の
     人の心もそろうでしょう