足ることを知る

                      胆沢町・正福寺住職 渡邊泰玄 



  まず初めにお聞きしますが、昨日の睡眠時間は充分
でしたか、この頃のように忙しい世の中ではほとんどの
方がもっと眠りたいとお答えになるでしょう。

 では何時間くらい必要ですか。人によってその答えは
様々でしょう。しかし十二時間以上眠っていたいと答え
る方は少ないでしょう。しかし、十二時間眠ろうと思って
も、ふつうは自然に目が覚めてしまいます。

  次にお聞きしますが、お腹は空いていますか。もし、
好きなものをいくら食べてもいいと言われたらどうしま
す。この答えも人によって様々でしょう。しかし、肉を十
キロとか、ケーキを百個なんて応える人はいないでし
ょう。

  人が一度に食べられる量は限られています。では、
最後の質問です。どれ位お金がほしいですか。私を含
め多くの人は、お金が欲しいと常々考えています。で
は、いくら必要なのでしょうか。

 これも人によって様々でしょう。ただし、お金は、睡眠
や食べ物と違って限界がありません。朝になれば目が
覚めますし、食事をすればお腹がいっぱいになります。
 
 しかしお金は違います。儲かれば儲かる程、貯まれ
ば貯まる程より一層お金が欲しくなります。睡眠や食
欲は人間の生理に基づく一定の限度がありますがお
金に対する欲求には際限がありません。

  お金に対する欲求には私達自身が枠をはめなけれ
ばならないのです。どれ位のお金があれば充分なの
か、自分で限度を決めなければなりません。

 このことを仏教では満足することを知る、即ち「知足」
というのです。