心の中に床の間を  

                  雫石町・広養寺住職・平井正道


「心の中に床の間を」、少し変な言い廻しかもしれませ
んね。都会の方では住宅事情に依り、床の間を作らな
い家庭が増えていると聞きます。

 人の心を和室に譬えるならば、床の間は慈しみの心、
ゆとりの心であると思います。床の間には花がよく似合
いますね。見ている人の心を和やかにしてくれます。
 
 私ども曹洞宗には「日常の五心」という、「すみません」
という反省の心、「はい」という素直な心、「おかげさま」
という謙譲の心、「私がします」という奉仕の心、そして
「ありがとう」という感謝の心という五つの誓願の言葉が
ございます。
 
 多分皆さんの中にも菩提寺にお参りをされて、ご存じ
の方もおありでしょう。「すみません」「はい」「おかげさ
ま」「私がします」「ありがという」、よく日頃使われてい
る五つの言葉ですが、これが会話の中にはいって来ま
せんと、スムーズにいく筈の家庭や職場、果ては友人
関係までもしっくりとしませんね。
 
 自分に都合のいい人は善い人だといい、自分に都
合が悪くなるとけなす、皆さんも見に覚えがありません
か。ちょっとした心のゆとり、感謝の気持ちがないため
に、人間関係にひびが入ったり、信頼関係を失ったりし
ているのではないでしょうか。
 
 今私達は、物質的には大変充たされているようです
が、その反面心はどんど貧しくなっていると言われて
おります。心貧しい・・・・・いやな言葉ですね。
 
 釈尊が説かれた知足という教えの中に、「足る事を
知る人は、心は穏やかであり、足る事を知らない人は、
心はいつも乱れている」と言われております。
 
 さあ皆さん、心の中のちょっとした床の間に「日常の
五心」をそっと置いて、おれがおれがを捨てて、おかげ
おかげと暮らしたいものです。
    
  

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