生きるとは、生かすこと   
             種市町・長圓寺住職・藤岡龍海

 


 修正義の第二十三節に「利行は一法なり、普く自他を
利するなり」とありますが、ただそうせずにはおれない心
に誘われた見返りを求めない行為、それが利ぎょうであ
り、利行は自分にも他人にもよい結果をもたらすとの意
味です。
 
 いつの頃からか記憶にありませんが、もう随分前から
私は虫などの生き物の生命を奪わなくなりました。
 道を歩けば蟻を踏まぬように気をつけ、家に蟻や草鞋
虫が入ってきてもティッシュで摘まんで外へ出してやりま
す。
 
 でも、時には蚊や虻に刺されそうになった時、咄嗟に
パチンと叩いてしまいますけれど・・・まだまだシュバイツ
ァー博士の境地までには程遠いようです。
 
 うちでは今、二匹の小型犬を飼っています。やってき
て五ヶ月になる二匹目の犬は、夜道路で轢かれて動け
なくなっているところを通り掛かり連れ帰った犬でした。

 上半身をもたげ助けを求めている姿がライトに照らし
出されたされた時「助けなければ」と咄嗟に思い、少し
の躊躇でいったん通り過ぎた車をバックさせ、乗せると
獣医に見てもらうため車を飛ばしたのでした。
 
 結果は骨盤が割れ、助かっても歩けないだろうから世
話が大変だとの診断でした。

 しかし、動物の治癒力は凄いものです。今では右後ろ
足を少し引き摺るもののすっかり元気になって家族の
一員として可愛がられています。
 
 この時助けてあげられたのは、実は偶然ではなくて以
前から何度も道で轢かれた犬を見て、助けなければ何
とかしてやりたいと思い、ゴム手袋と新聞紙とデレッキを
常備するように心掛けていた結果でした。
 
 やっとの思いが叶ったことで私は満足感で一杯でした。
 初め飼うことに反対していた母も今では子供のように
可愛がります。
 
 利他行をさせてもらう事ができた今度の体験は私の心
のふところを広げさせてもらった気がしますし、間接的に
母によっても結果的に良かったと思っています。