ケガした犬 
              紫波町・蟠龍寺住職・中野英明


  私は朝夕、犬を連れて近くの土手を散歩する
のを日課としています。
そこは大変景色の良いところなのですが、残念
なことには川原や土手に、缶や瓶、ビニール、プ
ラスチック類、はては紙おむつまでもが捨てら
れているのです。

 それで、少しでもきれいにしたいと思い、ゴミを
拾いながらの散歩となったのです。

 そんなある日、川から流れてきたゴミを、竿の先
に引っかけて取ろうとしたとき、誤って足を滑らせ
川に落ちてしまいました。その時何を思ったのか、
連れていた犬が川に飛び込み、その流れてきた
ゴミを口にくわえて持ってきたのです。

 それ以来、私と犬の二人三脚のゴミ拾いがはじ
まったのです。
 ところがある日いつものように犬が川から流れ
てくるゴミを見つけ、拾おうと土手を駆け下りたと
きのことでした。突然犬が「キャーン」といって、う
ずくまってしまったのです。

 駆け寄ってみると、足の裏から血がボタボタと
たれ、そばには鋭利割れたガラス瓶がころがっ
ていました。犬は痛さとショックのためか動けず、
犬を背負って帰り病院に駆けつけたのでした。

 足の裏の組織の一部が欠損したのでした。幸
いにも怪我は一ヶ月程で治り、またゴミ拾いが
出来るようになったのでした。

 誰かが何気なく捨てたガラス瓶なのでしょう。
そのガラス瓶が犬を怪我させるとは、捨てた本
人は知る由もないでしょう。
 しかしながら、その心ない行為が残念な結果
を招いたのです。
 
 ゴミのポイ捨てはもちろんのことですが、私た
ちは普段生活する中で、何気ない行為や、ちょ
っとした言葉使いで、周りの人たちに迷惑をか
けたり、いやな思いもさせることもあります。

 反対にちょっとした思いやりで、お互いにあた
たかい気持ちで暮らせることもできるのです。

 今一度、自分の行い、自分の言葉を振り返っ
てみたいものです。