完全燃焼     
           葛巻町・柳善院副住職・恵津森哲夫


「自分で自分を誉めてやりたい」アトランタオリン
ピック女子マラソンで二大会連続となるメダルを
獲得した有森選手のレース直後の言葉です。

 前回のバルセロナオリンピックから四年間有
森選手には様々なことがあったようです。
遣り遂げた事より、今まではりつめていた緊張
の糸が切れてしまった事による、メダル獲得者
としての周囲からのプレッシャー、有森選手は、
精神的なことでかなり悩んだそうです。
 
 しかし、四年間、自分自身と戦い続け、でた答
えが「私は走ることが一番」、この事に気がつけ
たそうです。四年間、自分のなかにあったことだ
わりや、周囲からのプレッシャーに勝ったわけで
す。

 仏教には、「縁起・空」という真理があります。
この真理は、自己を乗り越える事によって実感
することができます。

 修証義の中に「真理を得られたという感謝は、
こだわりを乗り越えた生き方をする以外の方法
では、まとはずれになってしまいます。

 自己の安心を得たことへの真の感謝は、毎月
四六時中の生き方の上に「安心」をたかめてゆ
くことしかないではないか」とあります。

 「縁起・空」とは肉体と心と人間関係という三者
共存するものです。時間的にとらえれば、私達
の生活の実態の変化を生きる私でもあります。
 その中で、確かなものとはどこにあるのでしょ
う。

 この今、不確かに見える現象で私がとうい生
存の実体を百%完全に生きることではないでし
ょうか。

 有森選手が「自分で自分を誉めてやりたい」
と、自分でいえた事は、一つの行動に完全燃焼
することができたからではないでしょうか。

 現代において、一つの事に、完全燃焼するそ
の感動が少なくなってきている今、もう一度生
活存在というものを見直す必要があるのでは
ないでしょうか。

 「日日の生命を等閑にせず、私に費さざらん
と行持するなり」これを道元禅師様は、直下承
当といいます、意味は、「そのまんま、そのとこ
ろが仏の心であると受けることができる」という
ことです。