合 掌    
             前沢町・耕雲院住職・森住俊英


  お檀家さんでMさんと云う人がおります。そのM
さんのお家はお寺の後ろで、畑はお寺の前にあり
ます。仕事に行くときには必ず山門を横切らなけ
ればなりません。

 Mさんは、いつも通りぬけるときに立ち止まって、
本堂に向かい合掌して通ります。時には急いでい
るらしく、トラクターに乗ったまま帽子を取って頭を
下げて通ります。この間もその姿を見かけました。

  私は遠くから見ていて、その姿についつい手を合
わせてしまいました。何とも温かいおもいが伝わっ
てまいりました。Mさんの合掌は、ご先祖様に対し
て感謝の合掌であったのでしょうか。家族皆んなの
健康と子供達の活躍を祈っての合掌だったのでし
ょうか。

  そこで合掌について考えてみたいと思います。
普段私達はいつも亡き人に対しお香をたいて、ご
冥福を祈る合掌をしている人が多いと思います。
もっと大切なもう一つは、仏様をお手本として生き
ていく合掌があります。私達がこうして生きていく
ことが出来るお世話になっていることへの感謝の
合掌です。

  そして生きることに何事も怠ることなく、努め励
むことが出来ますようにとお祈りする合掌です。
仏様の教えは悪いことをせず、明るく、正しく、共
に人生を生きて行くことです。
  多忙な毎日を過ごしている中、時には一人心
しずめ、合掌して、仏様と自分を照らし合わせて
みては如何でしょうか。