般若心経    
                   千厩町・地蔵院住職・大場浩俊


 春になり、新入学、社会人として新しい生活を
始めた人が多い季節です。新しい生活でも、こ
れまで通りの仕事をして行くにしても、人生行路
の道しるべが、有るか無いかにより、でこぼこの
道、平坦な道を歩めるか変わってきます。

 その道しるべを、お釈迦様は般若心経という、
三百文字足らずのお経の中にしるしております。
その教えというのは「こだわりの心を捨てて、お
おらかに、自由に生きましょう」と云うことです。

 新しい人に出会う時や、物事を始める時は、誰
でも不安になるものです。相手の姿かたちに捉
われたり、噂に惑わされたりして、最初から勝手
に思い込んで、良い人、悪い人とレッテルを貼り、
そのような態度で接してしまいます。

 そうしますと、相手から返ってくる言葉まで、同じ
言葉でも善し悪しを付けてしまいます。例えば、お
はようという挨拶でも良い印象を持っている人か
ら云われるとうれしくなり、悪い印象の人には、な
れなれしくしないでとか、何か下心でもあるのでは
と疑ってしまいます。

 知り合いに、何かと反発を受けることが多く、嫌
われている人がいます。その人は一生懸命仕事
をして、休みの日でも出てきて掃除をしたり、花に
水をやったりしていますが、誰も評価してくれませ
んでした。

 その人は都会から田舎に転勤してきて、まわり
の人は自分より劣っているという態度で接し、自
分の意見が正しいと押し通すのです。その人は田
舎は劣っていると云うレッテルで物事を見たり考
えたために、反発が起きたのです。

 言葉や顔立ち、性別、服装、職業、噂など、先入
観に捉われて人を見ることなく、人生の道しるべ
に、般若心経の「こだわりの心を捨てて、おおらか
に、自由に生きましょう」を合い言葉に歩みましょ
う。

 お経は、生きて行くための方法がぎっしり詰まっ
ています。