一日一日を大切に生きる

   
このたびは、お陰様をもちまして300巻の写経を達成する事ができました事、心から御礼申し上げます。
   また、今日は記念品を送っていただき、ありがとうございました。本当に恐縮しております。
   職員や部屋の人たちには、御香の香りをおすそ分けしました。
 
   リハビリのつもりで始めたパソコンで、盛岩寺様のインターネット写経と出会い、今年中に300巻もできるなど、
   思ってもいない事でした。交通事故で重度の身障者となり、失意のままに時間だけが過ぎていきました。

   障害者に関するニュースや、自立支援法の改正などを見るごとに、身障者は社会のお荷物になっているようで、
   周りには明るく振舞いながらも、いつも暗い気持ちで過ごしてきました。
 
   写経と出会い、お経の意味はよくわからなくても、なぜか心が落ち着きました。筆で写経できたらどんなにか
   良いだろうと思いながらも、遺された機能でキーボードを押すことは楽しみでもありました。

   法話も読んでいくうちに、心にしみる事も多く、眠れない夜は人知れず涙を流す事もありました。そのうちだん
   だん心が軽くなって、生きる希望が少し見えたような気がします。人前に出ることはなるべく避けていたのですが、
   この頃は進んでリハビリにも行っています。
 
   健常であったら自由に動ける分、忙しさにまぎれて写経や法話にふれることもなかったかもしれませんが、
   このような身体になった今だからこそ、たっぷりある時間を静かに自由に使えることが出来た事に、感謝しなけれ
   ばならならないのでしょうね。一日一日を大切に生きるように務めたいと思います。

   今年は施設の入所者が5人も亡くなりました。10分前まで元気だった人が突然倒れて、そのまま亡くなるなど、
   目の前で起こった人の死に、生きる意味を考えさせられました。
 
   写経を通して人生観も変わり、今のこの時間を大切に生きようと思います。
   この1年間お世話になりましてありがとうございました。
   寒さ厳しくなる折、ご自愛のほどをお祈り申し上げます。

   *この文章はYさんの承諾を得てそのまま掲載しました。

  Yさんは当HP「電脳写経」で写経を始めました。キーボードを押すこともままならない重度の障害をもち
  ながら、300日間一日も休まず300巻の写経を成し遂げました。これは尊い浄行です。
  
  Yさんが一日一日を一所懸命に大切に生きていることは、「日々の生命をなおざりにせず、わたくしに
  費やさざらんと行持するなり」と、いのちの尊さを道元禅師が示しているとおりであります。
 
  自殺者の数が交通事故死者より多く、そして親の子殺し、子の親殺しがニュースに載らない日がない
  くらいです。余りにもいのちを軽んじているが、いのちの尊さを思うこころは微塵もないのでしょうか。

  Yさんのように、いのちの尊さをこころして、一日一日を大切に生きるようにつとめることを念じたい。