死ぬ事の哀れさありて生きることのむなしさありぬ津浪より五ヶ月
須貝美佐子
公園のいすに腰かけ足元を這う蟻見つつふるさとを恋う
上野ウタ子
さざん花の今を盛りと咲きをるにあわれひと風花散らしゆく
大津秀子
おそろしや波は鋼の爪を持ち郷土根刮ぎ破壊し尽くす
磯崎彬
新年のがれきに竦(すく)み写真持ち愛し名呼びし夕陽河岸人
中嶋多喜子
はひ上がり寒さと怖さに震へつつ歩めば避難所はるかに遠し
高橋昌子